日本と西洋では、奥行きの表現方法が異なります。
日本では、絵の中の距離感を濃淡で表現していました。手前ははっきりと、奥は霞がかった表現という感じです。江戸時代の浮世絵師、北斎の富嶽三十六景を思い浮かべてもらえればわかると思います。
一方、西洋では遠近法、パースペクティブの手法が確立しています。手前は大きく、奥は小さくという感じです。今やこちらは一般的なので意識することはないと思いますが、発明された当時は、さぞ凄かったことでしょう。
これらは建築の考え方にも現れていて、日本建築では、襖が連なることで空間に重層性を持たせています。西洋建築では、遠近法を逆手にとって、人間の感覚狂わせることで(奥の空間を絞っていく等の操作)空間に重厚感を持たせています。つまり、日本では対象物をどのように捉えるか感覚的に距離感を測っていましたが、西洋では図枠の中の構成で擬似的に距離感を表現するという違いがあるのです。
いまでこそ建築は我々の身近のものですが、一昔前は権力や威厳の象徴であったわけですからそのような建築的操作は今以上に大事だったのだと思います。今でも、それらのレトリックは空間をつくる上で重要なことには変りませんが。
そういった知識を持っていると、美術館やテレビの美術番組をみていると結構、楽しめます。たまに美術館なんかで絵を眺めるのよいかもしれません。
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